北々工房らしい「ものづくり」から、広葉樹活用への想いを形にしていく。

北々工房
代表
北川啓市

飛騨市河合町の北々工房 北川啓市さんに、「広葉樹のまちづくり」から北々工房のものづくりのことまでヒアリングさせていただきました。

ーー 今のお仕事を始められたきっかけを教えていただけますか?

北川啓市(以下、北川):小さな頃からものづくりが好きで、夏休みの工作が楽しみでした。高校卒業後は高山市の木工家具メーカーに入社し、製造前の試作品を作ったり、図面を描く技術職を13年ほど務めました。

ーー いつから独立を考えていましたか?

北川:独立は二十歳くらいから考えていました。しかし、冒険ができない性格なので、会社勤めをしながら少しずつ機械を買いそろえ、自身の作品を作る日々でした。朝5時に起きて出勤前に作品を作り、続きを帰宅後に深夜まで作る….。創作意欲に満ちていましたね。そうして自分の作品と工房を築いて、21年前に独立しました。

ーー ものづくりにおいて、好きな部分やこだわりはありますか?

北川:こだわりは、お客さんのオーダー通りに図面を書いて、正確に作ることです。その後、自分用にちょっと外したデザインやサイズで同じ物を作る。これがパズルのようで楽しいですね。あとは他の木工家がやらないことを探したり、見た人が毎回「あれっ?」と思ってもらえることが好きで、お客さんから「全く同じ物を追加で欲しい!」と言われるとガクンときます(笑)。

ーー 北川さんは「広葉樹のまちづくり」の取り組みが始まる以前から、地元の広葉樹を活用した作品づくりをされていたそうですが、そのきっかけはなんでしたか?

北川:地元の広葉樹に関心を持ったきっかけは薪ストーブかもしれません。焚き木用に地元の樹を原木で買ったり、もらったりするのですが、その中に作品に使えそうな物がけっこうあるんです。外国産の木材と比べても愛着があるし、僕は地元の木材の方が表情があるように思います。

ーー 薪ストーブがきっかけとは意外でした。原木に触れる機会はなかなかないですよね。

北川:はい。それからはなるべく地元の広葉樹を材料に使っていまして、有効活用できたらと試行錯誤しています。チップにすることは悪くないですが、利用価値のある物まで無選別でチップ材になるのはもったいない。僕個人の消費量は少ないでしょうが、多くの作り手に知れわたれば、広葉樹活用の可能性は広がると思います。もっと分かりやすく身近に流通されるとありがたいですね。

ーー流通で言えば、この飛騨市の地域単位でできることもあるのでしょうか?

北川:これまでの木材流通で言えば、飛騨の良材は伐られて他の市場に行ってしまいます。飛騨で家具用の木材を探すと全国から運賃をかけて仕入れてもらうことが往々にしてあります。本来であれば、河合町や飛騨で伐採された大きな丸太が地元で買えるはずです。簡単な話なのになぜそうしないのだろうと不思議に思っていました。

ーー おっしゃる通りだと思います。そうした理想と現実とのギャップを埋めてきたのが「広葉樹のまちづくり」の取り組みだったのでしょうか?

北川:はい。僕は川上である森林組合さんや、川中である製材所さんの現状やお話が聞けて良かったです。実際、複雑な事情を抱えながら皆さん山や木と向き合っていらっしゃる。商売はキレイごとだけではないですから。それぞれの立ち位置や事情などが分かった上で、じゃあこの飛騨市からどう広葉樹を活用していこうか?地域としてなにができるだろうか?と話し合いが始まったことは大きな前進です。

ーー 北川さんの視点から見て、広葉樹の「まちづくり」を展開する上で、飛騨地域の面白さはどういった部分にありますか?

北川:大手の木工家具メーカーさんがこの地域に集まっていますから、材木屋や機械屋など関連業種が豊富に揃っています。全国的に見ても珍しく、作り手にとって飛騨は良い環境だと感じますので、木工作家がもっと飛騨地域に増えると活発になると思います。ただ、木工業で起業や経営をしていくには、工作機械などへの先行投資が必要となるので敷居が高いのです。補助金が出たり、共同の工房を持てたりなど、やる気のある方を全国から誘致できる仕組みがあるとより良いと思います。

ーー まさに、川下である木工作家さんの目線からのお話でとても参考になります。

北川:まだまだ、広葉樹を切ることは環境破壊だと思っている方が多いかもしれませんが、実際は一度、人の手に掛かった山は適切に管理してゆかないと良質で安全な山にはならないのです。一つ一つの取り組みが広葉樹の価値を高めて、財産となる山を後世に残していけることを、もっと広く分かりやすく伝えていきたいですね。

ーー そのために北々工房さんでは、飛騨市の広葉樹を活用して、今後も面白いプロダクトを制作してくださるということですかね?

北川:そうですね。制作した作品を売るのが一番大変なのですが、経験上どんな作品でも、かならず気に入ってくれる人が現れるのは分かっています。手間が掛かるので安くはないですが、木製品を求めてくれる人がここ最近増えたように感じます。広葉樹が活用される出口が多様であるほど需要が増すと思いますし、広葉樹のまちづくりをきっかけに「みんなで広葉樹を活用していこう」という意思が分かりやすく、地域に反映されていったら良いですよね。そこまでたどり着けるように、北々工房らしいものづくりを楽しんで続けていこうと思います。

ーー 本日はありがとうございました。
店名北々工房
営業時間10時〜17時
住所飛騨市河合町稲越230
定休日土曜・日曜
ホームページhttp://www.kitakita.info/
会社名kitakita shop
営業時間11時〜18時
住所高山市本町2丁目34
定休日火曜・水曜
記事一覧に戻る