サプライチェーンが担うべき役割とは
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昨今、よくいわれるサプライチェーンの効率化
ウッドショックを契機に、改めて林業・木材産業におけるサプライチェーンの効率化について、盛んに議論されているように思います。川上側(=林業)と川下側(=住宅・建築)とで情報共有がされていないため、流通に無駄が多く、その結果として供給が安定しなかったり、あるいは適正な価格が川上側に還らなかったりしている、というところが、ざっくりとした課題なんだと思います。
私は業界の専門家ではないのもあり、あまり俯瞰的な意見を言うのは差し控えようと思いますが、実際に針葉樹と広葉樹、両方のサプライチェーンに携わっていた経験から、主観的に考えたことを整理しようかと思いました。
とりわけ、木材のサプライチェーンがどんな役割を担っていて、どんな価値を生み出しているのか。この点について考えていきます。
「効率化×価値の最大化=サプライチェーン」
そもそもサプライチェーンの役割として、流通の効率化と、それによる価値の最大化という双方の役割があると思っています。サプライチェーンのなかで適切な分業がされることで、その役割に特化した技術やノウハウが存分に発揮され、そして商品価値が最大化されていくということです。「商品価値が最大化されていく」ということは、価格競争力が出てくるというコスト的な意味や、販路や営業ノウハウという販売面での優位性、そして最適なプレーヤーが技術を発揮することで、商品品質があがるという意味かと思います。
それは、マーケットの変化の中で、自然と醸成されていく部分もあるかと思いますが、一方で、マーケットや資源の状況が変わってくると、もともとあったサプライチェーンの役割が機能しなくなるものなんじゃないかなと思います。
そうしたマーケットや資源をめぐる環境の変化の中で、「サプライチェーンの見直し」という議論が立ち上がってきます。その議論のなかでは、より適切な利益配分がされるようにサプライチェーンを調整すること、そして安定した供給量を確保するために情報のサプライチェーンを繋いでいくこと=ニーズに合わせた生産計画が求められます。
ここの議論では、「効率化」に焦点をあてた議論がどうしても目立ちますが、広葉樹に携わるようになったいまになって思うのは、本来のもうひとつの役割である「価値の最大化」を図るという視点を忘れないようにしないといけないな、ということです。
サプライチェーンの担い手は、人と技術
少し話が逸れますが、「なぜ木は高いのか」という質問に対して、どういう回答が考えられるでしょうか。針葉樹の業界にいたときは、熾烈な価格競争の中にいたこともあり、「そもそも木は安い」という感覚しかもっていませんでした。コストの引き算ばかりを考えていて、価値の最大化なんていう価値観は持ち合わせていませんでした。
ところが広葉樹の世界に触れるにつけて、たしかに足し算されていく価値というものを感じることができます。サプライチェーンの各担い手の技術やノウハウにより、次の担い手へと素材を渡していくプロセスを感じることができます。人と技術、そしてノウハウが一体となって、サプライチェーンの担い手となり、価値を足し算していく「価値の最大化」という機能が遺憾なく発揮されています。
つまり、「なぜ木は高いのか」という問いに対し、「木そのものというよりは、木に携わる人たちの技術とノウハウに価値があり、木が高いのはその技術とノウハウへの対価」という表現をすると思います。
飛騨市の広葉樹のまちづくりでは、新しい広葉樹流通を構築していくことを目標としているため、サプライチェーンをどうしていくのかを考える必要があります。その際に、効率化をすることによるコストの引き算をするだけでなく、サプライチェーンに対して、ひいては素材に対して適正な評価をし、価値の最大化を目指すという視点が欠かせません。それぞれのサプライチェーンの担い手が、そもそもどういう機能を担ってきたのかを丁寧に理解した上で、「効率化」と「価値の最大化」とのバランスを探っていくことが、とても大切なのではないでしょうか。
決して偉そうなことを諭したいわけではなく、最近感じていることを文章にし、記録に残しておきたかっただけです。こうした想いを、ちゃんと現実に落とし込んでいけるよう、がんばりたいです。