みんな森の話をしたがっている

活動・実績紹介

ローカルクラフトマーケットに参加してきました

オンライン上で、全国のローカルな作り手と使い手が出会うイベント、ローカルクラフトマーケットに参加しました。コロナ禍以降、クラフトフェアのような”Face to Face”で話をする機会が激減し、不特定多数で幅広い方々とのコミュニケーションの場というものが成り立たなくなりました。こうした事態は、広葉樹のまちづくりにとっても決してプラスではありません。広葉樹の森のもつ多様性を、それを損なうことなく活かすためには、そこに関わる人たちの多様性が必要であり、それゆえにこうした出会いの場が減ることの影響は、とても大きいと感じています。

そんななかで、ローカルクラフトマーケットという空間は、リアルでのクラフトフェアの良さをオンライン上に実現させたような空間になっており、大変ありがたいです。オンライン上であっても、リアルの良さである”Face to Face”での双方向的なコミュニケーションを取ることができるのが利点です。全国のローカルプレイヤーたちと、自宅から気軽に繋がれるのも良いですね。下記リンクにて、ローカルクラフトマーケットの説明があるので、イベントについて知りたい方は、こちらをご参照ください(https://www.localcraftmarket.co/)。

とりわけ、運営側のサポートがとても手厚く、心配なく当日を迎えることができました。こうした運営の方々とのやりとり自体が、ぼくにとってはかなり有意義で、改めて自分たちの取組みを客観的に評価する良い機会となりました。無料でコンサルを受けられるといっても過言ではないサポート体制です。出展を検討されている方には、クラフトマーケット当日のことだけでなく、そこに至るプロセスの価値も含めて、トータルでメリットを実感できるのではないでしょうか。

森の話を閉じ込めている現代人

さて、ここからは当日のようすについて、僕自身の感想も含めて整理していこうと思います。

これまでの運営側との打ち合わせも然り、そして僕が広葉樹活用コンシェルジュとして出展するに至った経緯も然り、重要視していたのは「何を、どのように、伝えるか」という点です。「伝える」ことに重きを置いていたため、これまでの打ち合わせもまた、そこの部分の確認と摺り合わせに費やしてきました。

しかし、実際に蓋を開けてみると、ぼくから何かを伝えるというよりは、参加者の方々が、なにか思い出したかのように森の話をされることが多かったのです。幼少期に過ごした森の想い出や、自身の山をゴルフ場用地として売却してしまった話など、これまで決して語られることのなかった森との関わりが、参加者の方々の口から自然と溢れてきました。

結局のところ、森と暮らしとの関わりがなくなるということは、森についての話をする場所もなくなるという意味でもあるんだと思います。かつての想い出や暮らしとの関わりは、決して語られることなく、人々の内側に閉じ込められていきます。閉じ込められているというだけで、忘れられることはありません。こうした小さなきっかけがあるだけで、次から次へと口から出ていきます。森についての言葉たちは、語られずとも失われず、ただ黙して内側に蓄積されているのではないでしょうか。

今回のコンシェルジュブースは、まさに森について話をする場として機能し、参加者の方々の内側にあった言葉が引き出されたのかもしれません。内側に閉じ込められた話は、かつての暮らしの景色に関わるものばかりで、それはとても個人的で、個別具体的な景色だと思います。しかし、こうした一個人から見た暮らしの景色がどういうものだったのか、どういう感情でいたのかというミクロな話こそ、記録・伝承していく必要があるのではないかと感じています。

つまるところ、ぼくたちは個別具体的な人生を生きるしかなく、ミクロな暮らしの総体が、街の景色や文化を形成していくものです。全体論に溺れることなく、ミクロな人の暮らしを丁寧に拾っていくことで、もっと大事なことが見えてくるような、そんな気がしてならないのです。

森と人は、双方向的に関わり合って、目の前の景色をかたちづくっていく