広葉樹の価値を信じて、飛騨市がチャレンジする第一号に。

飛騨市森林組合
新田克之

飛騨市森林組合 新田克之さんに、「広葉樹のまちづくり」から飛騨市森林組合の取り組みのことまでインタビューさせていただきました。

ーー 新田さんは森林組合でどんなお仕事をされていますか?

新田克之(以下、新田):生産管理がメインですね。スタッフをどこの現場に送り出すのか決めたり、工場とのやり取りや作業の見積もり、トラックの効率的な配車など業務は多岐に渡ります。作業工程を全部頭に入れて、スタッフの動きを采配しないといけないのですが、より効率の良い動線やトータルのバランスを考えるのは好きです。仕事は段取り8分ですから。

ーー 新田さんの采配があるからこそ、岐阜県で生産性トップクラスの森林組合なのですね。

新田:そうではないです。単純に現場の頑張りですよ。生産性トップと言っても、施業内容が違えば比べること自体おかしいですからね。ただ、いろんな努力は惜しみませんでしたけれど。

ーー ありがとうございます。広葉樹のまちづくりにはどんな想いで取り組まれていますか?

新田:飛騨市の森林は広葉樹が7割、人工林が3割で、林業を進めていく上では、これまでの人工林施業に加えて広葉樹施業をやりながら、林業に従事する人が普通に働いてごはんを食べられるようにしたいです。現場は、僕の裁量でできることは協力したいなと思いますね。珍しい樹種や形の材も請け負うので、まずは相談してもらえたらと思います。針葉樹の伐採は機械化が進んでいるので負担は少ないですが、広葉樹はほぼ手作業となるため採算を取るのが厳しいですね。さすがに非効率過ぎたり、できないことは正直に無理ですと言います(笑)。

ーー 新田さんご自身が広葉樹のまちづくりに取り組むモチベーションを、もう少し詳しく教えていただきたいです。

新田:いろいろと頑張って切ってきたけれど、結局、薪やチップと一緒にされる時はもったいないなと思いますね。ちょうど良い太さだけどちょっと曲がってるからダメとか。その逆でもうちょっと太ければなあとか。僕らの基準ではそう判断しちゃうけれど、それを逆に利用してくれる方もいるだろうから、もっと取り組みを伝えて少しでも多くの材を使ってもらえればと思ってやっていますかね。

ーー コンソーシアムを立ち上げたことで、川上ばかりに負担がいくのではなく、しっかり付加価値をつけて流通できたら良いですよね。

新田:コンソーシアムの方に限らず、皆さんには一度、山に来てもらいたいなと思います。林業に興味ある人は多いけれど、作業は山奥でやってるから見えませんよね。私たちが使用している機械も皆さん見たらびっくりされます。広葉樹林は、基本勝手に育ちますが自然任せであって、現状ある樹種でも20年後にはなくなっていたり、手入れを行わず放置した結果標高の高い所ではブナ林だけになったり、カシノナガキクイムシの被害を受けてナラが枯れて倒れたり、土砂崩れの原因につながったり、いろんな意味で広葉樹林のあり方みたいなことを、みなさんに伝え関心を持っていただきたいですね。

ーー まさに川上の方からの視点ですね。そのほか、どんな想いで活動されていますか?

新田:森林組合はプロとして、しっかり広葉樹の育て方を説明できるようにならんと意味がないのかなと思います。広葉樹は本当に樹種が多く、僕らもそれぞれの木の特性をすべて把握できていませんから、経験していくしかないです。一本として同じ木はなく、山によっても違う。針葉樹と違ってデータも少ないので本当に手探りですね。

ーー 針葉樹と広葉樹にはそうした違いもあるのですね。

新田:極端な話、各地の森林組合は補助金をいただけるから木を切っている部分があります。それも対象は針葉樹がほとんどで、広葉樹には補助金がまず付きません。私が思っていることですが、本当は針葉樹と広葉樹は仲が良いのではないかと考えています。針葉樹同士、広葉樹同士は競い合いますが、混合林であればそれぞれ成長の仕方が違うので、上手く両立できると思っています。だからこそ、飛騨市森林組合として、人工林、広葉樹林、針広混合林の理想とする森の形を掲げて、補助金も含めて提案していけたら良いですよね。

ーー そういった形が本来の補助金活用の在り方かもしれませんね。

新田:短期的に価値があるのは針葉樹ですが、手入れができていない日本全体の針葉樹林の状態を見ると、「広葉樹の方が可能性があるのでは?」と言われることはありますね。たしかに今まで国が針葉樹にかけてきたお金を考えたら、針葉樹の方が大赤字ですよ。広葉樹は手入れをしてこなかったのに、今でも切り出してお金になったりするので決して負の財産ではありません。短期的には儲からないけれど、その価値を信じたいとも思っています。

ーー 飛騨市の森をより良くしていきたいとの意思を持った取り組みだと感じました。

新田:広葉樹の施業や活用の本格的事業はまだ誰も挑戦していないですから、飛騨市がチャレンジする第一号になりたいですね。将来に向けて取り組むべきですし、僕は面白いと思っています。その気持ちやワクワク感をより多くの方と共有したいですし、広葉樹の活用に挑戦していることを知ってもらえたら嬉しいですね。より分かりやすく伝えるためには、まずは飛騨市産材だけで一軒家を建ててみるところからですかね。できることはいっぱいあると思うので、引き続き、僕にできることで広葉樹のまちづくりに関わっていきます。

ーー 本日はありがとうございました。
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