可能性を信じて仕分ける。広葉樹 活用の鍵を握る柳木材の取り組み
株式会社柳木材
柳 和憲
株式会社柳木材 柳 和憲さんに、「広葉樹のまちづくり」の取り組みからお仕事のことまでインタビューさせていただきました。
ーー 柳さんは柳木材でどんなお仕事をされていますか?
柳 和憲さん(以下、柳):会社の業務としては、山林の売買、木材市場や森林組合から原木を購入し必要とされる方への販売をしております。自社所有の山林も沢山あり、過去には自社の伐採班で伐採もしていました。私が入社するずっと前の最盛期には、自社には伐採班がいくつもあり、福井県の山林も伐採するほどけっこうな範囲で事業を手がけていたそうです。私は主に原木の仕分けの仕事をしておりまして、伐採した木材を家具や木工用、パルプ材用、より細かなおがこ用とざっくりと分けます。パルプ用やおがこ用の木材は、山からそのまま出荷していますので、土場に来る時点では家具などに使える良い木材にのみに絞られています。
ーー これまで飛騨市の広葉樹はどういった扱いだったのでしょうか?
柳:基本的には家具の材料用なので、末口直径で24cm上くらいからが販売サイズにはなりますが、一部の樹種については、例えばクリや朴の木は24cm以下の小径木でも売れていきます。仕分け業務を始めた当初、木材をどう仕分けるか勉強するために、木材をサイズや樹種ごとにズラッと並べて、西野製材所の西野さんにチェックしてもらったり、市場で聞いた情報を元に現場にフィードバックして仕分ける基準を変えてみたりと試行錯誤をしてきました。やはりナラやクリ、ブナなどの家具材の主流樹種は木材単価も高い水準ですが、その他の樹種の、特に小径木や節材、曲がり材は単価が本当に低いんですね。飛騨市は山林の塊ですが、そのうち高く売れる木材は、おおよそ10%にも満たないのが現状かと思われます。飛騨市の広葉樹のまちづくりの取り組みが始まってからも、自分自身の従来の考え方や、販売グレードの従来の仕分け方の印象が抜けないので、今でも仕分けは迷いますね。
ーー そうしたパルプ材やチップに仕分けしていた小径木をどこまで活用できるのかが、広葉樹のまちづくりの挑戦なのですかね?
柳:そうですね。節があったり曲がりがある木材については、やはり家具向け材料としては使いにくいので、販売先がほぼ無いような状態でした。ところが最近は、「節の木目が面白い」とか「曲がり材の歪さがナチュラルで魅力的である」といった感想が、ユーザー側から家具の作り手側に聞こえてくるようになったんです。ずいぶん前は、製品に節が有る物についてはクレーム対象だったと聞いておりますので、時代の流れが変わってきているんですね。実際にパルプ材にしても、曲がり材や大きな節材などは、積み方を考えたりしながらトラックに積み込んでパルプ会社に運び込んでいましたので、そうした曲がり材や節材などパルプにするしかないと思っていた木材の中に、もっと価値を見出せる可能性があることはありがたいですね。
ーー 実際にどういった広葉樹の買い手が見つかりましたか?
柳:地域おこし協力隊の及川君が参画してくれて、節材や曲がり材、末口直径24cm以下の小径木を購入してくれる大手家具メーカーさんと取引する機会が出来ました。この取り組みの中で、節材や曲がり材、小径木といった材木をどれだけ捌けるのだろうか?山から土場まで出して来たけど、結局パルプにするしかない木材もあるのかなと思いながら仕分けていましたが、家具メーカーさんに飛騨市の取り組みに共感して頂き、樹種やサイズ問わずほぼ全ての木材を購入していただきました。
ーー それは飛騨市の広葉樹の活用においてとても大きな前進ですね!
柳:そうですね。しかしながら、樹種や節・曲がり・小径などグレードを問わず購入していただける案件はありがたい反面、製材した板を大型トラック一車分で納品しないと運賃負けしてしまうため、それなりの木材数量を集めないといけません。次の課題としては、木材の材質を維持したまま必要量を確保出来るように、伐採の時期の調整や仕分け方法の整備ですね。こちらも及川君と相談をしながら、伐採から仕分けまでの流れを見直して、土場の回転率を上げて、より新鮮な材木を提供できるような管理方法に変更中です。また、湿気の多い夏場でも低温乾燥施設などを利用しながら、オールシーズンで広葉樹を供給できるような体制を目指して進めています。
ーー そのほか、広葉樹のまちづくりではどのような取り組みをされていますか?
柳:作り手の方々へ向けた新たな取り組みとしては、原木を自由に見ていただいて、欲しいものがあればその場で購入していただける場をつくっています。加えてその時のタイミングにもよりますが、自分が選んだ木材をそのままダイレクトに、西野製材所で製材する様子を見ることができるような機会の提供もしております。規格の揃った良材は使いやすさはあるものの、板材単価も高価でした。そこで、広葉樹の板を節や曲がり、傷といった欠点も含めて買ってもらうことで、作り手の方には材料費を抑えていただきながら、広葉樹の新たな活用方法を見出していけたらと考えています。こうした飛騨地域の広葉樹と作り手とのマッチングに関しても、及川君がサポートしてくれています。
ーー 今後も伸び代のある取り組みなのですね。最後に飛騨市民に伝えたいメッセージがあれば教えてください。
柳:普段から山に囲まれて暮らしているので、たまに都会に行っても、ついつい山を探してしまいます。それだけ飛騨に暮らす人達は、木々の緑色を常に目にする環境で暮らしております。その中で広葉樹に目を向けると、樹種によって木の中の色が違うんですね。赤っぽいものあれば緑っぽいものある。黒っぽいものもあれば白もあって、白の中にもクリーム色から真っ白なものまで。そうした広葉樹の多彩な表情を楽しめると、また大きく視点が変わるのかなと思います。
ーー 本日はありがとうございました。
店名 | 株式会社柳木材 |
営業時間 | 8時〜17時 |
住所 | 飛騨市古川町高野290−1 |
定休日 | 第2・第4土曜・日曜定休 |