広葉樹に関わる「人」が好き。想いを代弁者として広げていく。

ひだ木フト
myu-kikaku 代表
盤所杏子

ひだ木フト 盤所杏子さんに、「広葉樹のまちづくり」からひだ木フトの取り組みのことまでインタビューさせていただきました

ーー 「ひだ木フト」に携わったきっかけを教えてください。

盤所杏子(以下、盤所):きっかけは二つですね。一つは、長男の育児中に友人に誘われて飛騨地域で木育を推進する取り組みを始めたことで、木工職人さんや大工さんと繋がりがあったこと。もう一つは、嫁いできた当時、飛騨市役所企画課にいらした竹田さんにはとてもお世話になっていたこと。この二つのきっかけがあり、竹田さんから広葉樹活用の取り組みを聞いたときに「私にできることをやってみたい!」と思いました。

ーー 当初はどんなスタートだったのでしょうか?

盤所:初年度は地域おこし協力隊の方と一緒にテーマを考え、その方の前職がウェディングプランナーだったことをヒントに最初のチャレンジを「ウエディンググッズ」にしました。職人さんたちからは「そんなのやったことないよ〜(笑)」と困惑の声をいただきましたが、「私が欲しいんです!」と半ば強引に進めるうちにチームが一つになっていきました。試作品を結婚式で実際に使っていただいたり、市内のカフェで商品発表を兼ねた模擬結婚式も実施しました。反響は大きく順調なスタートではありましたが、ウエディング商品はなかなか販売機会が少ないことが弱点だと気づき、未来に向けてコンサルの方にアドバイスをもらうことにします。そうして、販売機会も多く価格も見あう「ギフト市場(贈り物)」に焦点を当てていくことになり、「ひだ木フト」の本格的な商品開発が始まりました。

ーー 商品開発を進める中で、盤所さんはどのような役割でしたか?

盤所:考えてみると私は、作品も作れないしデザインもできないしマーケティングもできないんですよ(笑)。なので、基本的には職人さんたちのアイデアを元に「それならこうしたらどうでしょう?」「こんなことってできますか?」と素人だから言える無茶なお願いや提案をしていました。贈り物をするタイミングである「進学・結婚・出産・定年」など人生の節目にぴったりの商品をみんなで考えていきましたね。この頃は月1回程度、数時間ほどのチームの会議を開催していて、お互いの作品についてアドバイスし合えるのは貴重な機会だったと木工作家さんたちにも喜んでいただけたのが嬉しかったですね。

ーー 飛騨の木を活用する点ではどう取り組みましたか?

盤所:正直、飛騨の広葉樹の小径木を活用するのはとても難しかったです。例えば、飛騨の広葉樹の特徴である「樹種の豊富さ」を作品で示すために、1つの作品に2種類以上の樹種を使用するルールを決めた年もありましたが、作品の完成度や供給量が左右されることもありました。最終的には、作品は作品としてしっかりと作れるデザインをもとに、背景のストーリーで伝えられたら良いのではないかという結論に至りましたね。そこで、新しく加わってくれたデザイナーさんとともに、「森を育てる木」をコンセプトに、ひだ木フトのストーリーや背景を伝えられるパンフレットを作成しました。

ーー 今後のひだ木フトはどんな展開を考えていますか?

盤所:ひだ木フトの作品を通して個々の作家さんの魅力を発信することが私の最初からの目標です。ウェブサイトでの販売強化や、関東圏など多くの人の目に留まる場所での販路開拓も進めています。また、商品販売だけではなく、ひだ木フトのネットワークを利用したワークショップやツアーを企画できたらと考えています。

ーー それはどんなツアー企画なのですか?

盤所:ヒダクマさんも飛騨の森をより知ってもらうための様々なツアーを企画されていますが、私は「森に関心がない人でも少し森を身近に感じることができる」企画です。例えば、「森が豊かだからこそ美味しいお酒や料理ができる!食べて感じる飛騨の森」みたいな(笑)。美味しいとか、美しいとか、五感で感じるものに勝るものはないかなって思います。

ーー 盤所さんは森や木の専門家ではないからこその視点が良いですよね。

盤所:一般の方の目線とプロである作家さんの目線を行き来できる、自分なりの「余白」を持っておけるように意識しています。同時に、エンターテイメントに走りすぎると飛騨の広葉樹を通して伝えたい本質が見失われますので、自分自身もっともっとしっかりと知識を身につけていかなければいけないなと感じています。

ーー まだまだ、広葉樹のまちづくりは裾野が広がっていないですかね?

盤所:林業振興課さんの取り組みによって、一気に飛騨市の広葉樹活用の可能性は注目を集めていてすごいと思っています。一方で、今後さらに可能性があるなと感じているのは、「教育・観光・福祉」のようなより一般の人たちの関心が高いところへ飛騨の森の要素をどう取り入れていけるかかなと思います。それぞれの現場での活用可能性や一体的推進のために自分ができることをしていきたいと思います。

ーー 盤所さんご自身のモチベーションはどこにあるのですか?

盤所:私は森や自然に関心が高いというよりは、そこに関わる「人」が好きなんです。ひだ木フトとして伝えたいことは、何よりも職人さんたちの「丁寧なものづくり」です。木に愛情を持って扱い、誰の手に届くのかを想像しながら、妥協せずにものづくりに取り組む姿は本当に素敵だと思います。私にはその姿勢をそのまま真似することはできませんが、その想いを代弁者として広げていくことはできると思っています。皆さんの想いが私のモチベーションです。

ーー 今後の広葉樹のまちづくりにどう関わっていきたいですか?

盤所:広葉樹のまちづくりの取り組みは、川上から川下までそれぞれのプレーヤーが個々の強みを発揮し続けていくことで実現できる長期戦だと思っています。ひだ木フトとしては、川下の商品販売機能や伝える機能を果たしていきたいですね。また、先ほども少し触れましたが、教育や健康などの分野での活用を市民の方と一緒に考えていくような取り組みにも関わっていきたいと思っています。飛騨の森について語ることが特別なことではなく、子どもたちの成長過程で当たり前のことになればいいなと思います。

ーー 本日はありがとうございました。
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